私は山あいの小さな温泉宿に嫁いで、早や12年目となりました。仕事の内容は少しずつ覚えてきたのですが、残念ながら先行き不安の中、この後もサービス業の不調が続けば、町全体としても寂しい限りです。
「地域の活性化」という課題に対して全国の市町村は、「観光客誘客」を掲げるところが少なくありません。昔ながらの観光地や温泉地においても、すでに各市町村が独自の角度から、さまざまなアプローチを試みている現状があります。
さて私どもの会津柳津温泉は、山紫水明で風光明媚な恵まれた観光地であり、特に千二百年の歴史を誇る福満虚空蔵尊圓蔵寺や糸滝不動尊月光寺など、由緒ある寺院があります。おそらく隣接の他町村の関係者の方から見ると、何もしなくても観光のお客さまがお見えになるように映るのかもしれません。ここ数年の町当局の「観光」への取り組み方も変化してきて、さらに積極的な展開をされております。つい先日の只見線のSL誘致なども、沿線の方の地道な活動の結果なのでしょう。たいへんな盛り上がりで、来年も期待されます。
ところで私たち観光地に住む者にとって一番大切なことは、いったい何でしょう。それは私たちが何を目指しているのか、という事ではないでしょうか。町内在住のある方は「これからは町自体のコンセプトが問われる時代」と言います。東京や大阪にある巨大なテーマパーク型の施設ではなく、人口五千人弱の私たちの町の住人がまず癒されて、そしてやさしい気持ちでお客様をお迎えできる、そんな観光地を目指したいと私は思います。これまでは「なりふりかまわず」や「おこぼれ頂戴的」な発想でも良かったのですが、これからは誰もが安価で想像以上の成果を上げることができる、インターネットというツール(道具)があります。現在、観光協会や商工会の若い世代の方が、これまでとは違う斬新的なホームページを作ろうと勉強されています。そしてこの道具を上手に利用している宿や観光地が、すでにたくさん出現していることは周知の事実であります。
そして問題はその中身なのだと私は思います。今やもう一度私たちは原点に返り「お客様のニーズ」と「商品やサービスの品質」について早急に手当てをしていかないと、足元をすくわれてしまうことになるかも知れません。せっかく技術が進歩して誰もが容易に全国に宣伝できるインターネットを手にしても、何をどのようにPRすべきか、が決定されていなければその先へは進むことができません。
30年以上も前から積み重ねてきた大分県の湯布院、たった一人で洞窟風呂を掘り続けて、今や日本一のリピーター客を誇る熊本県の黒川温泉、身近なところでは会津若松市内の七日町の町並みなどは成功例と言えるでしょう。たくさんの学ぶべき例がある反面、地域経済の停滞もあり、現在前進できないでいる観光地もたくさんあるように思われます。
もし今後も私たちが「観光立国」を目指すのであれば、今までの考え方や感覚を180度変換する必要があるかもしれません。そして今までのような横並び主義や、二番煎じのような受動的な発想ではなく、独創的な手法や発想で進むべきなのでしょう。もはや少しぐらい立派な施設や建造物ができたとしても、すぐに誘客に結びつくとは到底思えません。本当に大切なことは、私たちの心の奥底に持っている「おもてなしの心」だと思います。
■頂いたコメント
第85期民報サロン執筆 塩田美紀会津柳津温泉「花ホテル滝のや」若おかみ。河沼郡柳津町柳津在住、35歳。現在同ホテルのホームページ上で『若おかみの小さな日記』を日々更新中。洋裁などが趣味。 |